時計

車が止まり,開いた窓からちょっとホスト風の優しげな男が呼びかけてきた.
「すみませーん」
道にでも迷ったのかと思い,近寄る.
「・・・(聞こえない)しちゃって,余ったんですけど,これ,いりませんか?あげます.」
男が私に差し出したのは,金に光るペアの腕時計.固そうな白い箱に入っていた.
さすがに恐くなって断ると,男は少し寂しげな目をし,ウインドウを閉め去っていった.(実話)