ビジネスのためのデザイン思考

この本と次の本はビジネス書です.いずれもタイトルは異なりますが,主軸としている内容は一緒で「ものつくりは成熟してきた.これから重要なのはそれらを活かすストーリーだ」というストーリーを主軸にする考え方で,ストーリーを考えることで,意味あるものつくりができるでしょう,という話です.研究者の実験計画やデータ解析も全く同じなので,文言を読み替えながら読めば,十分参考になる点は多いと思います.

デザイン思考という言葉を初めて本書で知ったのですが,amazonとかを見ると,何冊かあるようで,知られている言葉なのですね.僕の感じとしては「ビジネスモデル」と呼ばれていたものが陳腐化してきたので,色をつけて「デザイン思考」と焼き直しているように感じます.本書でも後半は「ビジネスモデル」の説明が多々入っています.

本書の利点は,図示が全般的に的確で非常に読みやすいです.雰囲気をつかむには,非常に良い本でした.それに対して,具体例はあまりありません.後半が具体例になっているはずなのですが,私には後出しジャンケンな雰囲気が感じられました.
本書の主題の中に「不確実な状況の中で,ストーリーを作成し,ソレを遂行するためのパーツは,柔軟に組み替える」という事があるとおもうのですが,最も難しいのはストーリーを設定することだと思います.既存の「ものつくり」は,今あるものを発展させる(例えば,CPUという既存の物の速度を速くするとか)事に主眼がおかれ,このような状況では物事を演繹的に考えていけば,次に行うことがわかったわけですが,現代では演繹的に考えても次に行うことがわからず,「何をすべきか」を考えた上で「アブダクション」をしないといけない状況になっている.やはり何をすべきかをどのように見つけるかは難しいなぁと思います.この点は,次に示す本の方が,よりつっこんでかいてあります.
本書は,この点の指摘してある方法や内容は非常に読みやすいので,どのように現代になって問題が変わっているのかを知る人には,読みやすく,良い本だと思いました.

ビジネスのためのデザイン思考
紺野 登
東洋経済新報社
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